朝から晩まで455

1

プロローグ

 8月にえちごトキめき鉄道において「納涼急行」と称して、455系を使用したイベント列車が運行されました。酒好きの自分にとって、国鉄型車両でおつまみ付き、酒飲み放題の同イベントには「待ってました!!」とばかりの案件で、さっそく参加して堪能しました。なにせ、このコロナ過でこうしたお酒付きのイベント列車が軒並み中止だったこの2年。ようやく「時が来た」と、非常に嬉しかったものでした。
イベント終了時には同乗されていた鳥塚社長にもお礼を述べ、「次回あればまた乗ります!!」と、その時の素直な気持ちを伝えました。イベントが満員御礼でお賽銭含めて副収入も好調だったのか、はたまた想いが伝わったのかわかりませんが、再び酒ととおつまみ付きのイベント列車が決定。その名も、

 

「バル急行」

 

 このニュースを知った時、「ここで乗車しなければ後悔する」「伝えた想いは応えたい」と、参加することを決定。
当初は「バル急行」のみの参加を考えましたが、せっかくなら「朝から晩まで455」を選択。料金は3食付きで10,800円。「バル急行」だけだと6,800円であることを考えると破格値であることと、後日撮り鉄で同列車の撮影のロケハンかねて妙高はねうまラインを見ておきたかったこともあり、このコースを選択しました。幸い、11月6日出発便が申込時に残席僅かで席があったこともあり、これを選択しました。このコースの利点は、クハ455-701のボックス席を一人占有できて、かつお手製のテーブル付きで食事するにも環境がよいことです。ただ、8席しかないので、まあまあなプレミアチケットで、申込時点でこの後の13日と27日出発便は満席、「朝から朝まで455」コースとなる20日出発便も満席でした。

 

1)妙高はねうまライン快速列車

 

 某所から乗り継いで、直江津駅着。ここで受付とホリデーパスを購入。窓口で今日乗車分のすべての指定席急行券を受け取り。しおり付きで、なかなかの読み応えの内容です。

旅のしおりとD型硬券製の今日すべて急行指定席券。D型硬券 E-M1 MaekⅡ+Zuiko Digital 9-18mm/f4-5.6 えちごトキめき鉄道 8350M

 8時43分直江津駅発。いよいよ10時間39分の旅の出発です。占有席となる1号車のボックス席は私含めて満席でした。すべてがお一人様の乗り鉄のようで、各々が自分の世界に入ってさっそく満喫しているようです。コロナ前で陽キャな人がいれば同じ旅人同士で話も弾むかもしれませんでしたが、そうした人がいないことと、昨今のコロナ過でそれも中々許されないような所に、ちょっと寂しさを感じました。

 

 出発してほどなくして、朝食の配布。地元産おにぎりにお茶と質素なものでしたが、正直「こういうのでいいんだよ」(誉め言葉)っていうぐらい、この時間帯では丁度いい塩梅の内容。容器には手書きで「楽しいな、ありがとう」の文字。こういうのに弱い自分は年取ったのか、それとも殺伐とした世でこうした心が温かくなるちょっとした配慮が最近経験したないからなのか。朝から気持ち良い気分になりました。

朝食のおにぎりとお茶。米やのコシヒカリ弁当製 E-M1 MaekⅡ+Zuiko Digital 9-18mm/f4-5.6  えちごトキめき鉄道 8350M

 本列車は「快速列車」なので、1号車のクハも含めて指定席以外は地元の方々も乗車します。土曜日の朝とはいえ、部活に向かう学生含めて高田まではそこそこの乗車率です。急行型車両と言いつつ、間合い運用で普通列車や快速列車へ充当される運用は当時からもよくあった設定でしたが、そうしたことも含めての再現を置いたこの列車設定は、当時を知る人でなければ中々思いつかない企画かなと。一方で地元の足でもある故に、本列車に対する地元利用者の意見が寄せられている事実もあり、そのあたりをどう折り合いをつけるかということで、苦労が偲ばれます。

 

 高田を後にして、二本木駅到着。ここはスイッチバックの駅で、かつては隣にある日本曹達二本木工場から貨物輸送も行われていましたが、今は廃止となっております。昔、ここ発着の貨レを撮影に来たことがありますが、自分がここに来たのはそれ以来かもしれません。

二本木駅へ。後退による進入。時折速度計を見て速度超過にならないよう注意する。 E-M1 MaekⅡ+Zuiko Digital 12-60mm/f2.8-3.5 二本木駅 えちごトキめき鉄道 8350M

 二本木駅を出発し、列車は妙高高原に向けて進みます。途中、ロケハンを兼ねて撮れそうな場所をチェック。下りの快速は早い時間の低い光線でかつ順光なので、撮影条件としては絶好の条件。なので、それなりに撮り鉄がいると踏んでましたが、予想以上にいるorz。多いところでは30名以上はいた模様。うーん、これは次回の撮影時には夜明け前から場所取りしないとまずい状況。正直この列車に対してここまで撮り鉄が集結するとは予想してませんでした。これ、急行色でなかったらここまでいなかったんじゃないかなあ。

 

 そうこうしているうちに妙高高原到着。本列車は折り返して上り快速列車として直江津に向かいます。

妙高高原にて。E-M1 MaekⅡ+Zuiko Digital 9-18mm/f4-5.6 妙高高原駅 えちごトキめき鉄道 8350M

 

 上りもロケハンを兼ねて車窓を眺めながらの移動。左手には新潟焼山が山頂付近に薄っすらと雪をまとってます。

新潟焼山を望む。E-M1 MaekⅡ+Zuiko Digital 9-18mm/f4-5.6  えちごトキめき鉄道 8347M

 

 そうか、もうそんな季節なんだと、季節の早さを感じます。今年も新型コロナウイルスに振り回された1年が終わろうとしています。去年の今頃と違い、ワクチン接種が進み、少しづつ人の移動が許される状況になっており、そういう意味では出口が見えてきたのかな、と思いながら車窓を眺めめてました。

 往路のおにぎりと昨晩ほとんど寝ずの状態で乗車したこともあって、ちょっとウトウトと居眠り。まだまだ先は長い。昔の長距離列車の乗車ではこんな感じだったなあと、当時の感覚を思い出しつつ・・・。
やがて列車は再び地元の利用者を乗せて、10時35分に直江津に到着。間合い運用はここで終わりです。

 

2)急(いで)行(かない)1号~2号

 

 さて、ここから本来の「急行列車」です。但し、えちごトキめき鉄道の急行列車は、「急いで行かない」をコンセプトに、1~3号は運転停車や観光案内のための徐行運転を含めて、本来の急行列車な運転は行いません。但し4号については、本来の急行列車としての俊足を再現するスジとして、糸魚川~直江津間をかつての同線で運行されていた急行列車に並ぶ、28分で結びます。ここから「急行列車」として、まずは1号~2号の乗車です。急行1号から4号までの1号車はロングシートも含めて全席貸切、2号車と3号車が自由席になります。1号と2号では、1号車は「釜飯コース」として運行されます。

出発前の点検。E-M1 MaekⅡ+Zuiko Digital 9-18mm/f4-5.6 直江津駅 えちごトキめき鉄道 急行1号

 

 11時26分。直江津駅を発車。1号車は3組の釜飯コース組が乗車しておりました。2号車と3号車の自由席もまずまずの乗車率のようです。

運転士と立ち売り駅弁屋さんと。E-M1 MaekⅡ+Zuiko Digital 50-200mm/f4-5.6 能生駅 えちごトキめき鉄道 急行1号

 

 能生駅に「運転停車」。時刻表上は「通過」扱いですが、ここでは、乗客の撮影会以外に、釜飯の積み込みと弁当の販売も兼ねての「運転停車」です。停車の様子などを撮影して席に戻ると、出来立ての釜飯と熱々のカニ汁が準備されてました。

釜飯コース。その名も「運転停車釜飯」。E-M1 MaekⅡ+Zuiko Digital 9-18mm/f4-5.6 えちごトキめき鉄道 急行1号

 さっそくの実食。釜飯が思いのほか熱く、食しているうちにおこげができるぐらいの熱さです。入れ物が加熱しているのかな? カニの量もたっぷりです。一方カニ汁の方はセコ蟹も入ってカニ味噌の出汁がしっかり。自分は蟹大好きで満足でしたが、蟹好きでも「蟹味噌」がダメな人は、ちょっと厳しいかもしれません。ちなみに子供の頃は「蟹味噌」がダメだった人間でした。が、大人になってお酒を嗜むようになり、食の傾向が変わってからは大好きに。今だと、甲羅酒とかたまりません。あと、全般的に味付けが醤油辛い印象でした。これはたぶんに、元々淡口醤油の食文化圏出身な自分にとって好みとして醤油の濃い料理や汁物にハードルがあるのと、ここ数年の減塩生活で昔は好きで食していた塩味や醤油が濃い料理がちょっと厳しくなってきたからなのかと。そういう意味では、食文化圏の違いでこの釜飯や蟹汁に対して評価が分かれそうでもあります。最もそれがイコール「おしくない」ではなく、これが「地元の味であり、食文化である」ことを補足しておきます。

 

 

 糸魚川12時20分着。ここで、高速貨物Aである4060レを先行させるため退避します。本来の急行列車であれば富山まで逃げ切るでしょうが、そこは急(いで)行(かない)列車。のんびりと待つことになります。到着前放送でも貨物列車の通過に注意する旨の放送もあります。また、駅のホームには、注意喚起の張り紙もあったりします。

4060レ通過。E-M1 MaekⅡ+Zuiko Digital 12-60mm/f2.8-3.5 糸魚川駅 えちごトキめき鉄道 急行1号

 

 12時28分頃、定刻通りに4060レが通過。その先の閉塞が開いて、出発信号は進行現示し、12時34分に出発しました。列車は、糸魚川の町を後にして親不知海岸に沿って進みます。

列車名の由来にもなった姫川。E-M1 MaekⅡ+Zuiko Digital 9-18mm/f4-5.6 えちごトキめき鉄道 急行1号

 

 釜飯後の食後のデザートとポリ茶瓶が提供されましたので、ここで頂きます。お湯はセルフで入れるのですが、お湯がめちゃくちゃ熱い!。「やけどに注意」と書かれてましたが、ガチで熱いので注意が必要です。ポリ茶瓶のお茶って何十年ぶりだろう。一口飲んで、

「・・・・・」

 舌はよく覚えているもので、「あー、確かにこの味だわ!」と記憶が蘇ります。そう、熱さでポリエチレン樹脂が気化?してお茶の味に混じって独特のブラスチック臭がした、あの味!。これ、今時の若い子が飲んだら「なんじゃこりゃ??」ってな程に、決して美味しいとは言えない代物です。せっかくの「おーい、お茶」の味も台無しです。

しかし!

 お世辞にもおいしいと言えないその味も含めての再現度を狙って、敢えて熱々のお湯を準備していたとすると、いい意味で再現度の高さに敬意を表したいです。少なくとも、ポリ茶瓶を経験した世代なら、間違いなく同じ感想を持つでしょう。経験したことのない世代には、再現度の高さを伝えたいものです。

釜飯コースのデザート。ポリ茶瓶とともに。E-M1 MaekⅡ+Zuiko Digital 9-18mm/f4-5.6 えちごトキめき鉄道 急行1号

 

 そんなお茶とデザートを頂きつつ、厳しい冬の前の穏やかな日本海を右手に見ながら、12時52分に終着市振駅に到着しました。列車はここで折り返して、急行2号として直江津まで運行されます。市振駅では18分の間にちょっとした撮影会です。

折り返し出発前。E-M1 MaekⅡ+Zuiko Digital 50-200mm/f2.8-3.5 市振駅 えちごトキめき鉄道 急行2号

 

 13時10分、市振駅発。直江津に向かって455系は進みます。

四五五神社。E-M1 MaekⅡ+Zuiko Digital 12-60mm/f2.8-3.5  えちごトキめき鉄道  急行2号

 

 13時28分、糸魚川着。隣には午前便で到着していた雪月花が、午後便の出発に向けて準備を進めておりました。

雪月粧と観光急行。E-M1 MaekⅡ+Zuiko Digital 12-60mm/f2.8-3.5 糸魚川駅 えちごトキめき鉄道 急行2号

 

 13時42分糸魚川駅を出発。釜飯とデザートで満腹となって車内もいい感じの温度。程よい揺れに再びうたた寝。直江津を出発してからちょうど行程半分の所で、まだまだ旅は続きます。

 

2)急(いで)行(かない)3号~4号

 

 次は直江津~糸魚川間での運行です。3号ではパティスリー リ・リ特製のスイーツとホットコーヒーが提供されます。

スイーツコース。E-M1 MaekⅡ+Zuiko Digital 9-18mm/f4-5.6 えちごトキめき鉄道 急行3号

 包み紙にある「パーラーカー」の言葉。ここにも昭和のセンスが光ります。包み紙を取ると、ヘッドマークをあしらったクッキー。箱を開けると、5つのケーキで、中央のケーキにもヘッドマークをあしらった飾りつけ。後日SNSで見ると、それぞれのヘッドマークは異なっていたようです。中々手の込んだ仕掛けです。

 さて実食。異なる5つのケーキの味が楽しめる仕掛けで、どれもこれも美味しいです。全般的に結構な甘さがあり、甘党な人には申し分ないかと思われます。一方でコーヒーは、甘さ故に苦みがより甘さを引き立てる、あるいは甘目が苦手な人には甘さが引く、いい塩梅のホットコーヒーです。一つ一つがそこまで大きくなく、「あれ?こんなもの」な第一印象でしたが、食してみると意外とボリュームがあって、コーヒーのお替りがいらないぐらいの満腹感です。

 

 再び能生駅に「運転停車」。ここでも撮影タイムと駅弁の立ち売りです。この後の「バル急行」に向けて、食事物が足らない時用に、「笹寿司工房なごみ」さんの笹寿司を購入。こういうちょっとした販売にも購入支援することで、1日でも長く運行とイベントが開催されることが大事です。

能生駅にて。日が落ち始めて輝く車体。E-M1 MaekⅡ+Zuiko Digital 50-200mm/f2.8-3.5 能生駅 えちごトキめき鉄道 急行3号

 

 15時51分終点糸魚川3番線着。ここから一旦引上線へ入換し、1番線へと転線します。ツアー客特典?として、入換作業に添乗できるということなので、私はそちらを選択。指令との無線を聞きながら、455系は直江津方の引上線へと移動。上り泊行の普通列車出発後、1番線へと転線しました。昔は、分割併合列車で客扱いを一旦終了して引上線へと入換し、転線する運用は様々な列車で行われていました。現在は全くなくなったわけではありませんが、機会としては少なくなりました。

入換信号進行現示。1番線へ。E-M1 MaekⅡ+Zuiko Digital 12-60mm/f2.8-3.5 糸魚川駅 えちごトキめき鉄道 急行3号

 

 16時40分。急行4号として直江津へ向かいます。これまでの3列車と違い、本来の急行列車として直江津までノンストップで爆走します。所要時間は28分! 列車は板屋敷のデッドセクションを通過後、フルノッチでスピードをぐいぐい上げていきます。中間車からはMT54のモーター音が唸りを上げてます。外はすでに日没となり、少しづつ闇へと変化していきます。七尾線時代でも直線区間はそれなりにフルノッチで爆走してましたが、やはり本線を爆走して途中の小駅を通過していく、という場面まではありませんでしたので、通過も含めての「急行列車」であることを実感しつつ、流れる明かりを眺めながら思いました。

2号車と3号車を望む。ここだけ見ると令和と思えない光景。E-M1 MaekⅡ+Zuiko Digital 50-200mm/f2.8-3.5  えちごトキめき鉄道 急行4号

 17時46分、直江津着。これで通常の観光急行は終点となります。これからは、今回のメインでもある「バル急行」へと、続きます。

 

3)バル(Bar)急行

 

 ここから自分にとってのメインイベントであります「バル急行」の運行です。ここまで約9時間の旅も、残すところ1時間余り。長距離急行であれば、終着駅までもう一息といった場面です。

 出発前に一通りの撮影をして自席に戻ると、おつまみセットとグラスがセットされてました。今回のおつまみは、直江津駅近くにある「Des amis intimes(デ・ザ・ミンティアム)」(日本語直訳:親しい友人)が提供する、特製ピンチョスです。ピンチョスとは、小さく切ったパンに少量の食べ物がのせられた軽食のことだそうで、スペイン料理の一つです。ぱっと見、急行3号で提供されたデザートと同じく「あれ?こんなもの?」と思いましたが、なかなかどうして、こちらも食べるとボリュームがあって、これだけで満腹になりました。

バル急行のおつまみとワイン。E-M1 MaekⅡ+Zuiko Digital 9-18mm/f4-5.6 えちごトキめき鉄道 急行バル号

 急行バル号。今回はスペイン料理ということで、迷わずワインをチョイス。一杯目は個人的な好みもあって白ワインを選択。ワインはチリのワインで、自分でグラスに注ぐスタイル。発車前に注いでおき、列車の出発に合わせて乾杯。ここまでアルコール類は我慢しており、満を持しての本日初めてのアルコール。

 

うーん、腹に染みわたる。

 

 そういや、455系などの急行車両が全盛の頃って、特に輸入ワインは高い飲み物で、食堂車は別としておよそ座席で頂くことなんて考えれませんでした。それが、酒税法の改正や流通網の発達などで外国産でも手軽な価格のワインが飲まれるようになり、こうして455系でも飲めるようになるのは、隔世の感があります。

チリ産ワイン。E-M1 MaekⅡ+Zuiko Digital 9-18mm/f4-5.6 えちごトキめき鉄道 急行バル号

 前回の納涼急行と違い、すでに日没後で外は闇。流れる光の景色を眺めながら、MT54モーターの音をBGMにワインとピンチョス。天井を見上げると、新たに運行開始を知らせる国鉄の広告に、独特の昭和の匂いに包まれた昭和の雰囲気が流れる車内。これもまた贅沢なひと時です。他のボックス組の乗客も自分の世界に没入しており、ちょっと不思議な空間。なんというか、VRとかで疑似体験なんてのが持て囃される昨今に、リアルで現物で体験できることの素晴らしさ、言い古された表現ですがLIVE体験というのが重要だな、とほろ酔いの中でぼんやりと感じました。

車内広告。E-M1 MaekⅡ+Zuiko Digital 12-60mm/f2.8-3.5  えちごトキめき鉄道 バル急行号

 ちなみに、車内広告は455系が使用された路線の関わる広告が中心でしたが、その中で異色で個人的に一番萌えた広告はこの広告。「出雲」「瀬戸」ともに、くしくも「ヨン・ナナ・サン」ダイヤ改正(昭和47年3月15日)でブルートレインとして寝台特急に格上げされた列車です。それから昭和から平成、令和と三時代に渡り、運転区間と列車名の改名(サンライズ化)がありながらも、2021年11月時点で定期夜行寝台列車として唯一生き続けている列車でもあり、感慨深いものがあります。

 

 

 18時30分糸魚川着。17分の「停車」の後、直江津に向けて再び走り出します。ビンチョスは完食し、能生駅で購入した笹寿司を食します。意外にワインとも合う事が解り、寿司を食べつつも、ワインのお替りです。2杯目に赤ワインを頂きましたが、自分の好みでこちらが合っていたので、それ以降はずっと赤ワインを飲み続け、結局ボトル半分以上は飲んだかも。

なごみの笹寿司。E-M1 MaekⅡ+Zuiko Digital 9-18mm/f4-5.6 えちごトキめき鉄道 急行バル号

 

 糸魚川発車後、今日最後のデッドセクション通過。日中と違い、通過時の予備灯だけの車内は、はっきりとデッドセクション通過を体感できます。

デッドセクション通過。E-M1 MaekⅡ+Zuiko Digital 12-60mm/f2.8-3.5  えちごトキめき鉄道 バル急行号

 

 そういや、七尾線のデッドセクションって昔、地元のニュースネタで取り上げられたこともあったと記憶。地元の利用者にとっては当たり前の「日常」。七尾線の運用末期に乗り鉄や撮り鉄が集結してたころは、「何しに来ているんだろう」と思っていただろうなあ。と同時に、昨今の鉄オタに対する風当たりの強さを聞くにつけ、地元の利用客では心の中で鬱陶しく思っていたことは想像に難くないです。そんな状況の中で、路線維持の増収策であったとはいえ、七尾線で運用していた本編成を買い取った鳥塚社長の英断には頭が下がる思いです。

 

 そんなことを思いつつ、列車は間もなく直江津に到着です。8時43分に出発してから10時間を超え、ようやく「終着駅」へ。同じ所を行ったり来たりしていた割に、いろいろな食の提供、時間とともに変化していく風景、30分~1時間の停車中での車外へ出ての気分転換、走行音をBGMにうたた寝と、飽きの来なかった乗車でした。

 

 19時22分直江津到着。10時間39分の旅は、ここで終わりです。

JR東日本の観光列車と。E-M1 MaekⅡ+Zuiko Digital 50-200mm/f4-5.6 直江津駅 えちごトキめき鉄道 バル急行号 Shu*Kura

 乗車前は、West Express 銀河以来の1列車で10時間越えの乗車で、しかも昔ながらのボックスシートで耐えられるか不安でしたが、前述の通り時折体を動かす機会があったので、そこまで疲れずに完乗できました。むしろ、ワインの飲みすぎの方でフラフラになっており、この後3時間かけて自宅まで普通電車で乗り継いで帰るのが辛かった・・。

 

エピローグ

 

 約3か月ぶりとなった、観光急行の乗車。本車両は2022年の検査切れまでは運行する一方で、その後は未定という。そのため、検査切れ以降の運行継続に向けて四五五神社へのお賽銭やグッズ購入を呼び掛けてます。動態保存による列車運行に限らず、静態保存車両においてもせっかくの保存がその後の資金難で車両の解体になったケースが多々あります。そういう状況を鑑みるにつけ、鉄道ファンとして、今までどれほど協力できたのだろうかと。とすれば、鳥塚社長の尽力に応えるには一回でも多く乗車したり、グッズを買ったりしなければならないと思いました。これは何もえちごトキめき鉄道だけでなく、いすみ鉄道しかり、JRの博物館や動態車両達もしかりです。

 遠方だと中々そうした支援は難しいかもしれませんが、せめて自宅近辺で運行されている観光列車だったり保存車両のイベント列車への乗車などで支援することが一人一人行うことで、チリツモとなって次の世代に受け継ぐことができるのではないでしょうか。2回目の乗車で、そんなことを考えながら帰途についた、そんな旅でした。

関連記事