1)予約争奪戦
昨年に「サンライズ出雲91号」を利用しましたが、その時の感想として次の乗車はシングルDXかサンライズツインと思っていました。そこで、今回の帰省で様々な段取りから上りサンライズ出雲号を利用する行程を組む機会を得ることができ、そこでいずれかの席を確保することを目指すことになりました。
日程としては、12月31日にコミケに行くことだけは決定事項だったので、選択としては12月29日発「サンライズ出雲92号」、もしくは12月30日発の定期「サンライズ出雲」のどちらかでした。
まずは11月29日に12月29日発「サンライズ出雲92号」の予約に挑戦。こちらは某駅の10時打ちにてシングルDX狙いで窓口へ。幸い他の利用客がなく、窓口氏に事前に10時打ちの申し入れしておき、いよいよ発売。10時ジャストで窓口氏が操作、しかし結果は満席。まあ予想はされていたことでしたが、上りでも厳しい現実を知ることになりました。
翌11月30日は12月30日発の上り「サンライズ出雲号」です。前述の通り冬コミ参加を決めており、とにかくとれる席ということで自宅でe5489による予約を選択しました。
運命の10時。必要項目を入力しEnterボタンを押下。当然ながら「混雑中です」の表示。連打せずに「戻る」ボタンで戻り、再度Enterボタンを押下。ここでも連打せず1回のみ。4回目の押下で、なんかするりと抜けた感覚を感じで残席表示のページへ遷移。「まあ、シングルぐらいは残っているだろう」と思って表示された画面を見て、思わず動揺。
「シングルDXが△表示になってる!!!」
一度も見たことがなかった、シングルDXの「△」表示。これは全くの想定外でした。ここで取りに行かないと一生後悔する、そんな気持ちで迷わずシングルDXを選択。座席選択の画面に遷移し、ここで当然ながら「どの席でもよい」を選択。ボタンを押下し、処理中画面へ。
「頼む!来てくれ!」
この時、物理的に説明ができるとかオカルト的な何かっぽいということではありませんが、処理中画面を眺めているとSFアニメとかでよく表現される、回線の中を高速で抜けていくシーンを妄想してました。
「決済処理中」の文言が表示され「これは来るか??」とさらに祈ること数十秒。
「予約が完了しました」
「をっしゃあああああ!!!」

大変なことになりました。「どれでもよいから席が取れれば」ぐらいと思ってのまさかのシングルDX。予約画面を見ると受付時間は10時1分。発売開始から予約完了まで数十分の感覚でしたから、振り返ると一瞬の出来事だったことが分かります。
取れた当初はなぜ?と解らなかったのですが、一つ心当たりがあるとすれば、この日は「サンライズ出雲91号」の発売。「サンライズ出雲91号」が蒔餌となってガチ乗り鉄がそちらに集中したことで、「サンライズ出雲」のシングルDXに一瞬の空きが発生したと思われます。ともあれ、何度か利用した「サンライズ出雲」で初めてのシングルDX乗車となりました。

2)本日の献立

OM SYSTEM OM-1 M.Zuiko Digital 12-100mm/f4 2026.12.30 4032M サンライズ出雲 シングルDX車内
今回はシングルDXの乗車が叶ったことで、お酒もつまみも気合を入れました。東京発と違い、今回は出雲市発。とすれば、おつまみは子供頃から食べ親しんだ郷土料理を、お酒は山陰の地酒を選定です。この場面でどこでも飲めるお酒やおつまみの選択はあり得ません。そして、そこは地元の利。購入先は勝手知ったる地元の店を中心に事前に購入しました。

一本目は島根ビールさんの【松江ビアへるん 雪女「せっちゃんの白ビール」】。事前情報なしでラベルに惚れて買った一本です。ビールの苦味が苦手な人にお勧めと記載されておすが、確かにお勧めできます。 それより、後述するお刺身に地元出雲の醤油ブランドである井ゲタ醤油の刺身醤油に、抜群に合う! 西日本の甘い系の刺し身醤油で刺身を頂くのが好みな人に、超お勧めです!
なお、このビールは松江駅構内にあるシャミネ松江の鷦鷯屋で購入。他で見かけなかったのでここで買うのが正解かもしれません。

二本目は大根島研究所さんの「島根どじょう掬い饅頭クラフトビアエール」。 後味にくるのは、紛うことなき「どじょう掬い饅頭」の、あの味。 これ、面白い味だわあ。 今日は刺身だけど、ローストビーフとかにもあいそう。シンプルに思ったけど、公式は「嬉しいです」ってコメントしてますが、ガチどじょう掬い饅頭とセットで呑むのが、マストかもしれん。

三本目は、松井酒造合名会社さんの「大山ハイボール」。 「山陰ハイボール」と違った味で、入り口が葡萄酒っぽい。ハイボール初心者かお酒苦手系は「山陰ハイボール」、そうでない人にお勧めかな。葡萄酒っぽいから、肉系がいいかも。

拘ったつまみの最初は「寒鮒の刺身、子まぶし」。元々宍道湖で採れる鮒による冬の出雲地方で食されてきた地元料理です。宍道湖での獲れる量が少ない一方で需要はあるため、近年は岡山県など県外産で賄っている状況です。
以前は冬の帰省の際、父が宍道湖で釣った?か知り合いから譲ってもらった寒鮒を家に持ち帰って、自宅での晩酌で食してました。そんな父も今は施設に入り、寒鮒を食することもできなくなりました。今思えば非常に贅沢な時間だったなあと、そんなことを思いながら食しました。

二つ目のおつまみは「赤貝の煮つけ」。オールナイトバー「サンライズ出雲 91号店(みせ)」乗車記(後編)でも触れましたが、島根県の郷土料理で中海で取れた「サルボウガイ」を使った郷土料理です。これは、かつて中海では「サルボウガイ」(赤貝)の日本一の漁獲量があったことで、古くから地元で食されてきた郷土料理でした。しかし、中海干拓事業の推進や高度成長期における水質悪化により昭和50年後頃には、その「サルボウガイ」の出荷が途絶えました。それでも地元では、他地域で水揚げされる赤貝(自分の記憶では岡山県)を用いて、スーパーでの総菜としての販売や生の赤貝を購入して家庭で作って食していました。私自身も子供のころ、実家で冬になるとこの「赤貝の殻蒸し」が食卓に並ぶことが日常で、よく食べたものでした。多分、島根県人でなければ選択に上がらないつまみでしょう。

三つ目のおつまみは、サワラの刺身。昔は山陰地方で揚がる魚ではありませんでしたが、近年は日本海側でも揚がるようになったそうです。
ここまで紹介したおつまみの購入先は、出雲市駅から徒歩10分程度にある「ラピュタ本店」です。ここはJA出雲が経営する地元スーパーマーケットで、年齢の高い人達にとっては「センター行ってくーわ」(旧店名出雲生活センターが由来)と呼ばれてきた地元密着型スーパーです。「イオンモール出雲」「ゆめタウンいずも」と二大ショッピングモールがありながらも依然として存在感のあるスーパーで、出雲市駅では買えない刺身類や調味料とかはここで購入がお薦めです。

ここからは日本酒を頂きます。まずは加茂福酒造株式会社の「死神 純米」です。醸造元曰く「日本一縁起の悪い酒」。この銘柄の誕生の背景には、2000年前後の淡麗辛口が持て囃されていた当時の日本酒市場の傾向に反発して開発された銘柄で、かつそんな方針で開発された新酒の命名に敢えて不吉な名前を与えることで、希少性と話題性で注目を集めることになりました。とはいえ、元々生産量は少ないことから流通経由での県外販売は少ないので、県外の方々においてはネット通販での購入となります。

次は池月酒造の「誉池月 誉池月 Pink 桃色活性にごり」です。冬季限定のにごり酒で、ピンク色は酵母による発色が特徴です。元々にごり酒自体が甘めでありますが、この酒は苺に似た甘酸っぱさと発泡が相まってさっぱりとした飲み口です。私は、にごり酒はあまり好みでなかったのですが、行きつけのバーでいろいろ美味しいにごり酒を紹介してもらったことから、積極的に飲むようになり、今回もお酒の選定の中で見つけたお酒です。

三本目は李白酒造の「李白 特別純米 辛口 やまたのおろち(生)」です。こちらは先ほどの誉池月と違って辛口系の生酒です。出雲地方のお酒は出雲杜氏が古くから手掛けておりますが、味の傾向としてしっかりとした「いかにも日本酒」的な飲み口で、今時の「淡麗辛口」的な傾向は少なかったです。近年の日本酒ブームや求める味覚に合わせることで、新たな銘柄を開発しており、この「やまたのおろち」もその一つです。
これら三本の日本酒を購入したお店は、出雲ドーム傍にある「西屋」さんです。ここは、個人商店ながらアルコール類だけでなく、たばこやおつまみといったものも含めて非常に充実したお店です。お酒に関して言えば、島根県内酒蔵の限定酒は大体扱っており、過去には酒蔵と連携してオリジナル日本酒を販売してました。また焼酎の計り売りも充実しております。出雲市駅から一畑バス大社線八野神社口停留所下車徒歩5分のところなので、レンタカーがなければちょっと行きづらいですが島根県の日本酒を買うのであればお薦めです。
個別に紹介したもの以外のところでは、
・板わかめ:渡邉水産食品の味付きわかめ。今回は食べ残しても持ち帰れるように小分けタイプを選定。
・とびうお燻製干し:有限会社マルコウさんとこの商品。島根といえばあご(とびうお)。なので、これを選択です。
・あごの焼き:有限会社小田川かまぼこ店の「あご入り野焼き」。そのまま食べてもよし、わさび醤油にしてもよし。出雲の練り物でおかずにおつまみ、お茶請けにと万能。
・鯖ジャーキー:有限会社小倉水産食品の鯖ジャーキー。鯖は日本海側で昔から食されてきたなじみのある魚です。
・さしみ醤油:出雲市の醤油と言えば株式会社井ゲタ醤油。西日本かつ日本海側の地域らしく、ドロッとした甘い系が特徴です。今回、刺身を持ち込む時点でこの醤油で食することは決めていたので、前もってラピュタで購入しました。
3)呑み鉄視点での意外な盲点
ビジネスホテル並みの広さがある、シングルDX。出発後に広いテーブルにお酒とつまみを広げて一人宴会を始めましたが、シングルとの違いになんとなしに違和感が。そう、
「窓の外を眺めながらお酒が飲めない!」

OM SYSTEM OM-1 M.Zuiko Digital 8-25mm/f4 2026.12.30 4032M サンライズ出雲 シングルDX車内
これはベット側から見たテーブル周りの光景。

そして、こちらがテーブル側からベット側を眺めた室内。この通り、椅子を進行方向に向けても着席位置から幅の広いベットを挟んでの眺めとなります。ここでは、広いベットが仇となります。また足元側にテーブルはあるものの、ここにお酒やつまみを置いても窓の位置関係で距離があり、落ち着きません。
うーん、これは盲点でした。前回シングル乗車時は、お酒やつまみは足元側テーブルがちょうどよい距離になって手に届く位置にあり、窓の反対側すぐに壁があって背もたれにすると窓全体が巨大なモニターとなって流れゆく車窓を眺めることが可能でした。それと比較すると、呑み鉄的にはシングルDXは、払う料金に対して割に合わないかもしれません。もっとも、これだけ広いテーブルがあるからこそ今回の豪華な刺身などのつまみを一度に並べることができること、洗面台があるのでグラスを洗って違う酒で注ぎ直せる、それとシャワーカード購入の手間がなくなる優位度を買うかどうかというところです。
そんな感想を持ちながらも時々外の景色を見つつ、順調にお酒とつまみを頂きます。と、半分ぐらい戴いたところで、岡山到着。ここで酔いを醒ますために、一旦車外へでます。「Westexpress銀河」の乗車時もそうでしたが、窓の外の「日常」と夜行列車の中の「非日常」との交差で、途中駅でのホームに立つと日常にふと戻る感覚になります。そんな取戻しの感覚とホームの雑踏で自分の立ち位置を確認。仕事の面でメンタル的にやられた2年間の中で、なんとか生き残って今を生きている自分。もう定年が見えてきた歳で、いつまで元気に生きていけるのかわからない状況の中、「撮りたい列車」「撮りたい風景」「乗りたい列車」を求めて、
「行かない後悔より、行く後悔」
「撮らない後悔より、撮る後悔」
「100枚のド定番カットより自分だけが撮った1枚のカット」
そんな旅を続けていこうと、そんな振り返りを思いながら再び列車に乗り込みました。

ここから本格的に山陽線区間での高速走行に移行します。山陰線から伯備線にかけての走行音と異なり、ロングレール区間で滑るように「カタカタカタカタ・・・・」と走行します。かつての寝台客車時代の「出雲」号では、京都駅までの山陰線内は「タタンタタンー、タタンタタンー」とか「タタタタンッタタン、タタタタンッタタン・・」といった走行音でしたが、東海道線内に入ると同様に「カタカタカタカタ・・・・」と、「京都駅を過ぎたな」と分かったものでした。時代を経て、この変わり目は京都駅から倉敷駅へと受け継がれています。
走行音BGMが変わり、列車は東へと向かいます。ここまで冬の運行にしては珍しく定時運行です。雪でネックになりやすい山陰、伯備線を抜ければまあ大丈夫だろうと思いつつ、再び呑みを再開。ここまで刺身類はほぼ完食、日本酒も2本目も半分呑んでおり、まあまあ酔ってます。ここで先にシャワーを浴びて、少し酔い覚まし。この後もう少し呑んで、気分良く酔っ払ったままベットに飛び込めるよう、先にさっぱりしておきます。

シャワーを浴び終わり、再び呑みを再開。残り少なくなったお酒とおつまみを食しつつ、流れる景色を眺めて、時を過ごします。厳しい2年間を経てようやく落ち着きつつあったこの年末。この2年間の自分へのご褒美としての贅沢な夜。
そんなことを思いながら時間は0時を過ぎ、大阪駅着。ここで購入したお酒はすべて呑みつくし、お開きの時間です。この時点で、結構酔っ払っています。明日7時到着なので、ここで就寝について翌朝に備えるのですが、フラフラっとベットに横になってブラインドも閉めずに寝落ちしてしまいました。
4)寝落ち~下車へ
ハッと目が覚めるとすでに夜が明けており、時計を見ると6時50分。終着東京駅まで15分を切っています。昨晩の宴は就寝直前にある程度片付けておきましたが、身なりから何から列車から降りる支度が全くできおりません。慌てて身支度をして荷物を取り纏めます。ほどなくして終着駅到着の案内放送が流れ、窓の外を見ると品川を過ぎて新橋付近。何とか身支度を完了し、降車の準備を整えました。
7時8分。サンライズ出雲は定刻通り、東京駅に到着しました。下りサンライズ出雲と異なり到着時刻が早いことで、どうしても慌ただしい下車となります。昨晩は正直なところ呑みすぎていて、もっと寝ていたかったのですが已むをえません。そんな後ろ髪を引かれて東京駅に到着し眠い目をこすりつつ、荷物を担いで降車しました。昨日の出雲市とは異なり、東京は鮮やかな冬の青空で、今年を締めくくるには相応しい大晦日でした。
今回は、思わぬ形でシングルDXの乗車が叶いました。今回はシングルDXでしたので、次回機会があればシングルツインで、下段ベットを酒盛り場にして上段ベットを寝室にして過ごしてみたいものです。
そんな想いを胸、不要な荷物をロッカーに預けて東京ビックサイトへと向かいました。

終わり